BtoB企業にデザインは必要か

2022.07.01 Fri
カテゴリー ▶︎  Design Other Web

BtoB企業でウェブやロゴなど、デザインに投資するべきか悩んでいる方も多いと思います。比較的、BtoBのクライアントが多い僕ですが、クライアントから「BtoBだからデザインはこだわっても仕方ない」という言葉を聞くことが多々あります。
そこで、今日はBtoBにおけるデザインの必要性をご紹介をしていきたいと思います。

BtoB事業の背景

BtoBにおける取引先検討の裏側

BtoB事業の原則は、顧客である企業の問題解決に軸足をおいた商品・サービスを販売します。

世の中の企業は利益を生み出し、従業員の生活を守り、そして社会を潤すことが使命です。BtoBでは企業が顧客となる以上、趣味趣向を満たすものを販売しても仕方ありません。
もちろんおいしいコーヒーや、おしゃれなウォーターサーバーなど趣向性の高い商品・サービスもありますが、それらも従業員に快適な環境を提供し、仕事に集中してもらうためであったり、取引先をもてなすためであったりします。
問題解決となると、当然企業は、合理的に費用対効果を判断した上で、購入する商品・サービスを決定します。

一方BtoCでは趣向性の高いものが基本です。
電化製品や、美容用品など機能性が重要になる商品もありますが、個人が満足するかどうかが主軸に置かれるため、合理的判断というよりも、より情緒的に選ばれる要素が強い傾向があります。

こういった違いからBtoB企業では、デザインは重要とは思わず、機能やサービスが伝わればいいと考えている企業が多く存在します。

昔ながらの営業スタイル

BtoCでは顧客が捻出できる金額には限りがある反面、顧客数が多い為、決められた仕様を大量に生産して低価格で販売することが必要となります。

しかしBtoBにおいては、顧客数が少ないばかりか、高機能を必要とし、顧客企業にあったカスタマイズが必要で、工数が多くかかります。
そのため高額になりがちで、マネタイズの基本方針がBtoCとBtoBでは根本的に違います。

SaaSのように決められた仕様を提供するビジネスもありますが、いくつかプランを用意しており、最高クラスのプランではカスタマイズにも対応しているところがほとんどで、それらは高額になります。

購入する企業は、合理的判断が求められ、審査はより厳しく行なわれます。
そのため販売側は、営業マンの力が必要になっていきます。得に、ウェブが普及される前は、営業マンが長い時間かけて契約を獲得してきました。DXやマーケティングが苦手な日本人は、まだまだこの昔ながらの営業スタイルが経営を支えています。

これらの状況から、パンフレットやウェブなどは営業マンが営業する時の補佐役として捉えている企業も多く、このことが、デザインは重要じゃないという判断になっている一つの要因だと思われます。

不合理な人間

しかし、どれだけ合理的に判断されるBtoBの現場であっても、人間は所詮どこまでいっても人間です。どんな判断でも、心理的作用が少なからずあることは否定できません。

数年前に「予想どおりに不合理」という本が発売され、意外と人間は合理的判断をしていないと話題になりました。
行動経済学で提唱されている考え方です。
行動経済学とは心理学と経済学をあわせたもので、マーケティングをより学問的に解説したものと言われています。

事実、企業のイメージを改善させるために、ターゲットやコンセプトを客観的に決めても、いざデザインを選ぶ時に自分の好みだけで選んでしまう企業は星の数ほど存在します。むしろそういう企業の方が多い。合理的判断が求められる場面でも、そのような不合理な判断を下しているのが現実です。

合理的判断には限界がある

契約先を選ぶ企業にとっての合理的判断とはなんでしょうか。
製品のスペック、実績、知識レベル、費用対効果、納期、取引先企業、創業年数、資本金などで、客観的判断がされることが合理的判断と言えます。

資本金や創業年数などは、誤魔化しようない事実で誰もコントロールできません。そうなると製品のスペックや実績、知識レベルなどで顧客企業から評価をいただくしかありません。
こういった評価軸を、ブランディングの現場では「機能的価値」と呼びます。

この機能的価値はズバ抜けていれば、とても強力な武器になるのですが、ほとんどの場合はどんぐりの背比べで、追いつけ追い越せの世界です。
またハイスペックだから良いワケではなく、適度なスペックで低価格の商品・サービスを選ばれる企業も多く存在します。
こうしたことから、今の成熟した社会では、機能的価値だけで勝利することは現実的にむずかしいのです。

そこで必要になるのが「情緒的価値」。
これは、理念やスタンスなどへの共感、所有感、趣向性、自己投影心理(こんなブランドもってる自分っていいでしょ!という心理のこと)などがこれに該当します。
実は営業マンの清潔感やハキハキした話し方なども情緒的価値の一つです。最近になって情緒的価値が取引に影響している訳ではなく、昔からあった影響力の一つです。ちなみにデザインもこの情緒的価値に該当します。

しかし、主にBtoBにおいて重要になる顧客企業に与えるべき印象は「安心・安全・信頼」。その代表的な指標は結局、企業規模や製品スペックなどであり、よって、BtoB企業ではデザインは重要ではなく、機能やサービスが伝わればいいと考えてしまう方が多いようです。

しかし実はこの「安心・安全・信頼」というワードがマーケティングへの思考を停止させ、デザインの重要性を見えなくしてしまうクセモノなのです。

安心・安全・信頼とは

企業規模や製品スペック以外で、「安心・安全・信頼」を感じてもらう要素は具体的になんでしょうか。
実は、何を「安心・安全・信頼」と思うかは、買い手側の共感ポイントやニーズによって変わってきます。
たとえば他社と違う価値観をアピールすることで、その業界に対して不満をもっている企業は安心を感じることもあります。また理念的な思いによる言葉は共感をよび、信頼に繋がります。
そのため「安心・安全・信頼」を感じてもらうために、誰に何を伝えるべきか、を考える必要があります。

しかしそこを掘り下げず「安心・安全・信頼」というキーワードだけだと、取り止めがないため、何も特徴のないデザインの出来上がりです。そこに言葉と情報が載っているだけという結末が待っています。
ですが先にも述べたように、人間は不合理であり情緒的に判断をする生き物。そして機能的価値で勝負するには限界があります。

「安心・安全・信頼」を感じてもらうために、理念や思いなどを掲載するウェブサイトは多く存在します。しかし、一方でこういった「価値観」や「信念」などは得てして、宙に浮いた聞き飽きた御題目になりがちです。そうなったら、人の気持ちはなびくでしょうか。

機能的価値をアピールする場合も同じことが言えます。
「圧倒的高品質」「見たことのない画質」など、実際に技術力がそうであっても、言葉だけでは宙に浮いた御題目になってしまいがちです。

どうやって魅力を伝えれば御題目から脱することができるのか。それこそがデザインが必要になってくる大きな理由です。

デザインの捉え方

昨今では「ビジネスをデザインする」「生活をデザインする」といった広義な意味でデザインという言葉が用いられていますが、とても正しい使い方だと思います。本来デザインとは意匠と訳されるのではなく、設計と訳されるべきだと思っています。

  • メッセージをデザインする
  • 魅力をデザインする

こういった視点でウェブやロゴ、パンフなどのコミュニケーションツールを捉えると、デザインも無視できなくなります。

  • 自分たちが持っている魅力に相応しい佇まいなんだろうか。
  • どういう佇まいであれば言葉に説得力が増すのだろうか。

BtoBであろうが、BtoCであろうが、所詮人間がつくっているものです。
人の心理は無視できません。不合理な人間に対して、説得力のある魅力を感じてもらうためには、製品スペックなどのデータだけでは成り立たない世界だと捉える必要があります。そう考えれば、BtoB事業であってもデザインが必要のない現場なんてない筈なのです。

自社の取り組みが
伝わらず、
価値が理解されない
そんな課題感を
お持ちのみなさまへ

コードマークはブランディングデザインの手法を用い、企業のみなさまの意志を深く理解したうえで、貴社にフィットした制作物、制作プロセスのご提案をいたします。

Services

Services

自社の取り組みが伝わらず、価値が理解されない
そんな課題感をお持ちのみなさまへ

コードマークはブランディングデザインの手法を用い、
企業のみなさまの意志を深く理解したうえで、
貴社にフィットした制作物、制作プロセスのご提案をいたします。

Services

Services