クリエイティブ業界の言い値のデメリット。値決めのススメ。

2023.08.26 Sat
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デザインのプロジェクトは多様で、同じように見えても、クライアントや要件によって難易度や項数などが変わります。例えば、クライアントの機密事項によって撮影が制限されたり、ウェブサイト制作においてはセキュリティに対して高度な要望がでる事もあります。そのため、プロジェクト毎に、見積もりを立てて料金を決めるのが一般的です。
こうした商環境においては「料金基準」というものを設定しておき、それを軸にプロジェクトに応じて計算する手法をとります。しかし、その料金基準なるものを設定していないクリエイターが多くいます。

一方で、デザイン業界では価格競争が激化しており、価格を理由に失注しないために、クリエイターが発注者の提示した金額に従う、いわゆる「言い値」で受注することが、日常茶飯事となっています。

こうした傾向は問題だと思っています。料金基準を決めずに計算なしに言い値だけでを受発注を決めることは、プロジェクトに歪みをもたらすだけでなく、サービスの品質向上にも悪影響を及ぼす可能性があります。この記事では、言い値がもたらすデメリットについてお伝えします。主に、クリエイター向けですが、クライアントやプロジェクトマネージャーなどの発注側にもぜひ読んで欲しい記事となっています。

値段を考えることは、サービスそのものを考えること

ビジネスは収益を上げるために行われるもので、利益がなければ人は生活できません。収益を確保するためには、人件費、諸経費、市場価格、提供品質、クライアントの規模や経済状況などから料金を計算します。これにより、コミットすべきことやスコープ範囲などが明確になり、同時にサービスの改善点も浮かび上がります。

これは常識的な考え方ですが、料金基準を決めていないということは、これらをきちっと計算していない場合が多いと思います。つまり自分が提供しているサービスの価値を、客観的指標を元に計測しておらず、裏を返せば発注者に自信をもって、その料金の妥当性を説明できない。これは、発注者との関係においても健全とはいえません。

値段を考えることはスコープ範囲とプロセスを考えること

制作物の目的や背景に基づいて、達成するためにやること(スコープ範囲)は、案件によって変化します。スコープ範囲やプロセスを考えずに料金だけで受発注をきめることは、求める品質を提供できるかどうか、とても不明瞭です。

発注側が「この値段でやってくれるっていったじゃん!」といっても、受注側は「ここまでやるなんて考えてなかったよ!」といった事態に陥りやすくなります。もちろんこうしたトラブルは、きちっと見積もりをとっても起こりうりますが、言い値の場合、その確立は非常に高くなります。

正当な取引は料金を設定して初めて実現する

発注側は値段を安く抑えたい気持ちはあるものの、無理をして欲しいとは思っていません。少なくとも、弊所のお客様には「買い叩けばいいんだ!」というスタンスの会社は一社もいません。
一方で、プロジェクトの予算が決められているのも事実で、無理な値段で発注せざるおえない場合も時にはあります。

料金基準を設けずに言い値だけで受注をしていると、発注側が、無理な値段で発注しているということに気づけなくなります。料金基準を設定し、それを伝えてさえいれば、発注者は状況を理解し、項数に対して理解を示してくれたり、受注者が要望する条件に協力的になってくれます。その逆に、高い料金で発注していると理解すれば、ある程度無理なお願いができるという安心感を与えることができます。

しかし料金の基準がなく、言い値だけで曖昧に取引が成立してしまうと、発注側はどこまで相手に期待していいものか分からなくなります。
受注側も、本当は利益が出ている案件であっても、なんとなくの数字の印象で、勝手に「安い」「割りに合わない」などの、計算していないからこそ出てくる漠然とした不満を持ってしまうことにも繋がります。

よほどの信頼関係が築かれていない限り、変な心理戦に持ち込まれることになるのです。

受注側が発注側に料金を伝えるのは、手の内を見せるということ

以前とあるプロジェクトで、外注先に見積もりを依頼した際「逆にいくらならいいですか?」と聞かれたことがあります。外注先からすれば、提示した料金が高かった場合に、失注してしまう不安があったのでしょう。
私は「計算上、マックス40万ほど確保はしている」と正直に伝えました。この金額は弊所の売り上げを少し削って、なんとか捻出した金額でもあり、むしろ全体の予算から考えると、潤沢にある方でした。
私は相手が「30万あれば可能なので、大丈夫です」などと、自身の料金を正直に伝えてくれるのかと思っておりましたが、「じゃあそれで。」の一言でした。
その後「コードマークさんとは一緒に色々お仕事をしたいので」とか「勉強になりそうですので」といった発言がありましたが、それらすべての言葉は「純粋に前向きな発言」なのか、それとも「ほんとはもっと高いよ」というサインなのか、分かりませんでした。もはや心理戦です。その外注先は、料金基準を設定しておらず、計算方法もなかったのです。
結果として、その外注先への信頼は消え、依頼しておりません。

このように料金基準を持たずに言い値に応じるというのは、裏を返せば、手の内を見せない行為にもなり、信頼を失うことにも繋がるのです。

正当な取引を第一に考える

実務を行う上で、たしかに言い値に応じた取引が必要なこともあります。予算が少なく交渉の余地がないときや、イレギュラーな案件がゆえに料金の算出が難しいとき、ビジネス上の駆け引きが必要なときもあります。無理をしてでも実績作りが必要なときもあるでしょう。

しかし、言い値をデフォルトにしてはいけない。発注側にも受注側にもデメリットがあるのです。
まずは受注側は料金基準をつくること。そしてそれを基準にちゃんと料金を考え、伝えること。もし言い値に従う場合も、一旦、料金基準と照らし合わせて計算し、スコープ範囲も想定して、受注して問題ないか責任をもって判断する。発注側も料金を確認し、ちゃんと検討する。それが正当な取引なはずです。

デザイン業界はもういい加減、変わらなければ確実に衰退します。失注したくなければ受注できるよう企業努力をすればいい。それが正当なサービスのブラッシュアップだと私は思います。

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