活きた企業理念とは

企業理念を重要視している企業は多いですね。
HR総合調査研究所が2013年8月に実施した企業理念のアンケートによると
実に85%の企業が重要だと答えています。
しかし、理念の形骸化やお題目化してしまい活用できていない企業も多く、企業理念が社員に浸透していると認識する企業はわずか6%しかいないようです。

僕はデザイナーなので、デザインを行う前にクライアントに理念を確認するのですが、
肌感とするとそもそも理念を作成する段階で、問題が起きているように感じます。

この記事は完全な主観ベースの内容になりますが、デザイナーとして多くの企業の理念に触れてきた身として書かせていただきました。

2019.08.28 Wed
カテゴリー ▶︎  Branding Other

世にあふれる似たような言葉たち

経営用語には企業理念と同じような言葉が数多くあります。

  • 企業理念
  • 経営理念
  • ミッション、ビジョン、バリュー
  • 企業使命
  • 行動指針
  • クレド
  • 社是
  • 社訓
  • コーポレートスローガン

などなど。

これらの使いかたは決められたルールが明確にあるわけではなく(漠然とふわっとしたものはあるが)上記の言葉のどれを使っても実は問題ありません。
ですが日本人の特性かは知りませんが、形式ばかりが先行して、理念はこう書く、ビジョンはこう書く、といった思い込みが優先し、気持ちがこもっていないものが多く存在しているように思えます。

大事なのは、活きた言葉であるかどうかです。
そしてその内容に一番フィットしやすい題名を与えてあげればいい。僕はそれぐらいライトに考えています。

弊所ではクライアントのブランディングを開始する際にはミッション、ビジョン、バリューという言葉を用いて、理念を作成します。なぜ数ある言葉のうち、ミッションやビジョンなどの言葉で作成するかというと、単純に一番わかりやすく直感的に表現しやすいと考えているからです。しかし企業の目指すものによって、ビジョンとミッションの立ち位置や定義を変えて使用しています。

ちなみに本記事でいう理念とは、様々な似たような言葉の総称として理念と称して書いております。

浸透しない言葉

クライアントの理念を聞くとよく出くわすのが以下のような理念です。

  • 私たちは〇〇の商品で世の中に貢献する

この〇〇にはその企業が扱う商品名や業界名が入るのですが、これでは浸透はまずしない。
というか僕が社員なら、右から左へ聞き流して終わりです。
実際にクライアント企業からそうした理念がでてきた場合、「この会社には理念は存在しないんだな」とさえ判断してしまいます。
なぜなら、会社という存在である以上、世の中に貢献するのは当たり前だからです。
この言葉では何かを伝えているようで何も伝えていないようにさえ思っています。僕がもしこの企業の従業員だとしたら、少なくともこの理念ではこの企業にいる意味が見出せないと思うし、理念に準じたサービスを作ろうにも、もはやなんでもありになってしまう。

もう一つ、よく出くわすまったく別のタイプのケースだとこういうものがあります。

  • 〇〇業界の中でナンバーワンになる

この場合は企業理念とは題さずミッションやビジョンとして掲げているのをよく見かけます。(別途企業理念を設定している会社もあれば、そうでない会社もある)
一聞分かりやすく感じるし、簡単に社内浸透ができそうに思えるのですが、
平たく言ってしまえば「俺たちはビッグになる」と言っているのと大きくベクトルは変わらない。
売上市場主義とも取れる言葉で、働いている本人たちがそういう主義であればいいのですが、商品を購入するお客様からすれば、何も心を打たない言葉です。
ミュージシャンのような職業であればいいかもしれません。ファンはきっと応援してくれるでしょう。しかし一企業に対して応援してくれるのは家族や友人がいいところです。

このような言葉は理念やミッション、ビジョンなどど掲げるよりも、事業目標として掲げておくのがベストだと僕は思います。

理念とコンセプトは似たようなもの

デザイナーという職業柄、何かをデザインするにあたりクライアントからコンセプトを提示いただく事も多々あるのですが、残念ながらコンセプトとして機能できていない場合が多い。
理念と似たような状況ですね。

僕が日々の業務で出くわすよくあるコンセプトが

  • ラグジュアリー

といった形容詞なコンセプト。
他には「最先端」「ロハス」「大人可愛い」などなど。
これではコンセプトにはなっておらず、ただのポジションというか、トーン&マナーといったものに近い。

コンセプト作りに必要な主なポイントは以下の三つ

  • 第三者に自分たちの意図が伝わりやすいか
  • 人によって様々な解釈ができにくいか(イメージする事に個人差がないか)
  • 完結明快か

このポイントを踏まえるとラグジュアリーという言葉では何も抑えていないのです。
もちろん、一言では全ては伝えられないケースも多く、その場合補助的にサブタイトルを用意するのですが、ラグジュアリーという言葉をコンセプトに置くには、あまりにも広範囲かつ普遍的すぎる言葉なのです。
ラグジュアリーという言葉でイメージする事には個人差が大きく、どんなラグジュアリーなのか、ラグジュアリーで何をしたいのかなどが伝わりにくく、人によってイメージが異なってしまうのです。

なぜコンセプトをつくるのか

コンセプトを作る最大の理由は、皆で一つの考え方を共有させる力があることです。
制作チームは同じ着地点へ向かえますし、消費者は自分の求めているものかどうかキャッチできます。

物事を考えアウトプットするまでの過程には、いくつものフィルターが存在します。
このフィルターを通ってもなお、不純物のない状態に保っているのは意外と困難です。
みなさんも日々痛感することと思いますが、人に何かを伝えることはとても難しいことです。

だからこそ、このフィルターをより真っ直ぐにクリアに突き抜ける為にコンセプトの力が必要になります。

これって、企業理念の役割と似ていると思いませんか?
企業理念は企業の存在理由を明確にさせ、一つの揺るがない指針を示すものです。それをみんなで共有して会社という集合体としてみんなで実現していこうというものです。
理念は商品コンセプトと違い「想い」によるところが多いので、このコンセプトのように限定的かつ明快に納めることが難しくはなるのですが、程度の違いはあれど基本的な目的は一緒だと感じるのです。

理念とは誰かに伝え、共有できる言葉づくり

そう考えると理念を作るポイントとコンセプトをつくるポイントは一緒のはず。

  • 第三者に自分たちの意図が伝わりやすいか
  • 人によって様々な解釈ができにくいか
  • 完結明快か

一旦、冒頭の例に戻ってみましょう。

  • 私たちは〇〇の商品で世の中に貢献する

これは何を伝えているのでしょう。
何かこの先の意図や思いはあるのでしょうか。
きっと思いはあるはずです。でも何も伝わってこないのです。少なくとも僕にはわかりません。

企業理念の策定は、企業の規模や事業範囲、業界風土にもよってなかなか単純ではないかもしれません。
しかしそんな小難しい話は置いといて、一番の基本的なことはなんなのか。
それは「誰かに伝え、共有できる言葉づくり」であることを忘れてはいけません。

安直に分かりやすさを求めることが全てではありません。
形式にこだわることも必要ありません。
ちゃんとその言葉が伝わるのか。伝えわるようにするには理念という言葉がいいのか、ミッションがいいか、コンセプトがいいか、副題を設けるべきか否か。格好つけすぎていないか。
「伝わる・共有できる」を考え作成すること。

それが、デザイナーという仕事通じて感じてきた理念の大切なポイントです。