定額デザインサービスの理想的な活用方法

2021.11.01 Mon
カテゴリー ▶︎  Design Other Web

昨今ちょこちょことデザインの定額サービスが出て来ていますね。
月額3万円から10万円ほどでデザインの依頼し放題が売りのサービスです。
一般的なデザイン事務所は、一案件、数十万から数百万かかるケースがほとんどです。
定額デザインサービスではそう考えると破格の値段です。

破格のデザインサービスといえば、他にはクラウドソーシングなどが挙げられますが、クラウドソーシングの場合プロなのか素人なのかわからない自称デザイナーが多数登録しており、その点が不安な部分です。
一方定額デザインサービスの場合は、その点が心配ありません。継続的発注ができますし使い勝手は良さそうです。LPやバナーだけでなくコーポレートサイトや企業パンフレットなども発注でき、魅力的に見えますね。
担当者をつけてくれるところであれば、徐々にデザイナーがクライアントのことを理解していきますので、話も早くなっていきます。

そんな魅力ある定額デザインサービスは、一般的なデザイン事務所とどのように違うのでしょうか。そして、理想的な活用方法は何なのか、デザインの現場にいる身だからこそ言える視点で、書いていきたいと思います。

一般的なデザイン事務所の現状

一般的なデザイン事務所では、クライアントの様々な課題に応じて解決策を考えデザインを制作していきます。
デザインと一言で言っていますが、クライアントの課題をコミュニケーション施策を用いて解決するために、案件をプロジェクトとして捉えて、さまざまな職能の人間と協業していきます。
規模や予算にもよりますが、デザイナー以外にもアートディレクター、マーケッター、営業、プログラマー、ライター、カメラマン、イラストレーターなどが参加します。

打ち合わせ、調査・分析、ワークショップ、コンテンツ企画、撮影の段取り、などなどそのプロジェクトにおける業務内容は多岐に渡ります。
デザイン費の7割〜8割は人件費で構成されていて、クライアントへコミットする時間が非常に長く、クライアントと共に課題を解決するスタンスなのでどうしても高額になります。

定額デザインサービスの概要

一方定額デザインサービスの場合、プロジェクトと呼ばれるほどのものではなく、文字通り、デザインの依頼です。クライアントがテキストや写真素材などを原則用意し、あとはデザイナーが純粋にレイアウトをしていく。
例外もあるでしょうが、基本的にはその業務範囲に収まります。オプションとしてライターによるテキスト起こし、取材なども応じているところもありますが、基本的には素材は支給のところが多いようです。
そのため、制作費を抑えることができます。

もちろん一般的なデザイン事務所も同様の進め方をとる案件もあるのですが、定額デザインサービスのように毎月の契約者数の利用頻度などによるトータルとしての稼働時間の相殺ができないので、同じ業務内容でも定額デザインサービスでは安く提供できるようになります。

ただし一般的なデザイン事務所の場合、企業の問題を把握したのち制作企画に乗り出しますが、定額デザインサービスの場合、原則受身になります。

  • 一般 →「どのような問題がありますか?」という課題解決スタンス
  • 定額 →「どのようにしますか?」というクライアントの指示に基づいたスタンス

要するに、作業する手を提供するといったところでしょうか。
もちろん課題は確認するでしょうし、クライアントへのアドバイスはしますが、そもそも5営業日程度でいきなりデザインの提出を行うサービス形態では、課題解決策の提案はかなり限定的な範囲でしか対応できません。また従来のデザイン事務所のようにチームを組んで対応しているわけではないので、できることは限りがあります。

謳い文句と現実のギャップ

僕の憶測でしかないのですが、課題解決と謳っている定額制サービスもあると思いますが、本格的に課題解決に挑んでいるデザイン事務所とは圧倒的に質が違うと思っています。

なぜなら一般的なデザイン事務所の多くも課題解決と謳いながら、この定額制デザインサービスと同じように受け身スタンスの事務所が多いからです。
デザイン業界は非常に評判が悪く、そのような受け身スタンスのデザイナーへの不満が後を経ちません。

これだけ聞くとますます定額制デザインサービスの方がいいと考えるのは当然ですが、
昨今、デザイン業界は二極化が進んでいます。
デザインというクリエイティブの力とそのプロセスを応用し、デザインの枠を越え、ブランド戦略の精度を上げ続けているデザイン事務所が増える一方、デザインの枠だけにとどまり、効率化に重点を置きコスト戦略に振っている企業の二極化です。

デザイン費用の7割〜8割は人件費とお伝えしたように、人件費以外の原価はほとんどかからない業界です。しかもそのほとんどがクライアントのためだけに制作した1点物です。
そのためデザインを安く提供するには、よほどの効率化や制約を設けない限り実現しません。もしくはSEOなどのサービス契約のフックとしてデザインを安く請けおういったセット売りでしか実現できません。
そうでなければ、ただ人材を安く使っているだけになります。そうなるとまだまだ駆け出しのデザイナーを集めて、成長のためのプラットフォームとして活用していると考えた方が現実的です。
そういう現場の実情を考えるとクライアントの課題解決を定額制サービスに求めるのは、現実的でないと考えるのが妥当です。

デザイン定額制サービス VS デザイナー雇用

多くの定額デザインサービスでは社員雇用のデメリットを解消できると謳っています。
アシスタントではなく、ある程度1人で業務をこなせるデザイナーを雇用するとなると最低でも月30万はかかります。
一方デザイン定額サービスでは少し多めに見積もって月10万程度です。
福利厚生もなければ毎月かかる電気代や交通費などもかかりませんし、オフィスのスペースもソフトもパソコンも必要ありません。お金の面や、雇用してから期待外れだったというデメリットは存在しませんね。
しかしながら、それはあくまで「手」が欲しいという側面に限られます。

ロンドンやニューヨークではデザイン事務所を買収する大手企業が増えており、僕がロンドンに滞在していた10年ほど前から、ブランディングは社内のデザイナーが行っている企業が多くありました。
このような社内デザイナーをインハウスデザイナーと呼びます。

一方で日本では、インハウスデザイナーは社内の細かいデザイン作業を行うポジションとして存在している傾向があります。そういった観点で考えれば、定額デザインサービスの方がデザイナー雇用よりもお得と捉えるのが妥当ですね。

しかし、これだけデザイン経営やブランディングが重要といわれる昨今においては、インハウスデザイナーのポジションを考える必要があります。

日本のデザイナーの質の低さが、いわゆる「手」としてしか存在意義をアピールできていない現状を招いているのは否定できませんが、
頻繁に制作物があるのであれば、インハウスデザイナーのポジションを改ることで、定額制デザインサービスの以上の活躍が期待できます。
給料を考えるとバランスを考えざるをえませんが、定額デザインサービスがデザイナー雇用よりもメリットが高いとは一概に言えないのです。

定額デザインサービスの理想的活用方法

上記のような現状を踏まえ、理想的活用ができるのは以下の企業だと思われます。

  1. ブランド戦略やデザインルールが決まっている企業で、日々のブランド運営に必要な細かな制作物を依頼したい企業
  2. 社内外に専属アートディレクターやブランドディレクターがいて、単純に手が欲しい企業
  3. SNSやブログなどを頻繁に活用していて、画像の制作が頻繁に必要な企業
  4. とにかく作りまくって、ABテストを繰り返し行い理想の売り方を実験したい企業

1〜3はデザインのコントロールができる体制にあり、かつ細かな制作物が多数制作する必要にある企業です。
4はブランドとしての見せ方云々は一旦置いといて、実験したい企業ですね。

4のように実験を色々したい企業は置いといたとして、
個人的には、あくまで理想の形としてのお話ですが、まずは企業やブランドの見せ方をしっかり定めてから、定額デザインサービスで運営をするといった、デザイン事務所の使い分けが理想なのではないかと考えています。

毎日SNSやウェブ広告をちょこちょこ作るような小さな制作物であっても、それは消費者に毎日のように目にされる物です。露出頻度が高いほど確実にブランドイメージを左右していきます。いくら安い定額デザインサービスであっても、無計画に作ったデザインによってイメージが誤認されてしまってはお金をドブに捨てるような物です。
その逆に一般的なデザイン事務所(しっかりと企画できるところに限る)で、ブランドの見せ方をしっかり定めたとしても、お金がかかる故に日々の運用ができなければ意味がありません。

しかしコスト構造が違う以上、料金とサービスが異なるのは至極当たり前の話。
使い分けることで、最も効果的なブランド運営ができるのではないでしょうか。

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