デザイン依頼の際、著作権で取り決めておきたいこと

2019.01.15 Tue
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企業が宣伝活動を行う際、注意しなければいけない事の一つに、著作権の問題があります。
眉間にシワを寄せたくなるような内容ですが、重要な項目ですので、きちっと取り決めをしておきたい事です。
どのように取り決めておけばいいのでしょうか。実例を交えて書きたいとおもいます。

※ 弊所はグラフィックやウェブサイトを制作するデザイン事務所ですので、あくまで広報物に関する著作権の範囲の話になります。

著作権とは?

著作権とは知的財産権の一種です。知的財産権とは、知的な創作活動の成果を保証し、形のないものを保護する権利のことです。
知的財産権の中には、特許権や意匠権、商標権もふくまれます。

著作権は申告罪

この著作権は申告罪です。たとえ、企業が違法をしていたとしても、最終的に著作者がOKといえば問題ありません。著作者が文句を言わなければ、原則罪に問われません。
とはいえ、そのデザイン事務所とは長い付き合いはできないでしょうし、悪評が立つのは当然ですからちゃんと法律は守りましょう。

ちなみに商標権は申告罪ではありません。

著作権には譲渡できるものとできないものがある。

著作権には大きく2グループにわかれます。

  1. 著作権(財産権)←譲渡可能
  2. 著作人格権←譲渡不可

1、著作権(財産権)

著作権(財産権)は、制作者が表現したものを保護する為の法律のことです。原則、制作者本人に与えられ、経済的利益を得る機会を保証するためにある権利です。

この著作権(財産権)は制作者から別の人へ譲渡できます。
著作権(財産権)を保有している人は制作物を自由にできる権限があります。

しかし契約書などできちっと取り交わさなければ、著作権は譲渡されません。明記しない限り、ロゴを納品したからといって、著作権まで譲渡されているわけではないのです。

譲渡には範囲がある

著作権は基本、制作者に帰属します。ですので、パンフレットを制作して著作権を譲渡しますと僕がいったとしても、あくまで、僕が作った範囲のものしか譲渡できません。
つまり、パンフレットの写真やイラストレーターが描いたイラストの著作権は制作者本人のままなのです。

著作権を譲渡されないと使えないのか?

譲渡されていない場合は、あくまで使用権をもらっている形になります。使用権なので、使用するにはルールがあります。レンタカーみたいなものですね。そのルールはそれぞれ契約で個別に決めていく必要があります。

2、著作人格権

著作人格権は、著作者(制作したクリエイターなど)の社会的評価や感情を守る為の法律です。

たとえば、A君が絵を描いて、B君にあげたとします。B君はその絵に鼻毛を書いたり、宇宙人みたいな絵を書き加えたりします。そこでC君が現れて、これ誰が描いたの?と聞くと、B君は「A君が描いた絵だよ」と言うと、A君の評判が下がってしまうから、やめようねって話です。

他には二次利用の問題。
極端な話、企業のPRのために撮影した写真を、二次利用してアダルトサイトに掲載されたりするのも制作者にとってはマイナスイメージになりかねないわけです。

これらはビジネスの上で言えば営業妨害になりかねないのです。
簡単にいうと、著作者(制作したクリエイターなど)の許可なしに勝手に変更したり、二次利用したりしないでねってことです。
でも実際のトラブルの原因としては、二次利用できるってことは企業にとっては新たな利益を生み出せる品物であるということなので、現実問題としては、このお金の話がトラブルの原因になってきます。

この人格権は譲渡できません。

著作権(財産権)と著作人格権はセットに。

ここまでの話だけ見ると、著作権を所有しても、著作人格権の侵害になるので、自由につかえないということになります。そこで、著作権を譲渡していただく際に明記しておくべきことは、「著作人格権の行使をしない」ということです。

具体的にどう記載するかというと、

「譲渡する著作権(財産権)には、著作権法第27条に定める「著作物を翻訳し、編曲し、もしくは変形し、または脚色し、映画化し、その他翻案する権利」を含み、また著作権法第28条に定める「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」を乙は一切行使しないものとする。」

なんか頭痛くなってきましたね。。。

まあ、つまり、「勝手にいじっても、俺文句言わないっす」ってこと。ここまで記載しないと企業は著作権を所有しても、メリットがありません。

著作権の譲渡をすることで得られるクライアント側の利益とは

たとえば、制作したロゴのデザイン自体が販売動機となるようなグッズを販売するとか、商標登録しフランチャイズ展開を考えてるとか、そういった形態になるなら、著作権は持っておいた方が企業としてはメリットがあるかと思いますが、通常の広報物であれば、著作権を譲渡されたとしてもあまり意味がないように思います。
トラブルを回避するのに大事なのは、著作権ではなく、二次利用の範囲や使用ルールだと僕は思っています。

具体的に弊所の外部パートナーのカメラマンを例にあげると

  • 撮影した写真を同社内での広報に使用するのはOK
  • 他社(グループ会社含む)の広報に流用する場合はNG

といった感じです。
この取り決めさえしておけば、問題はないでしょう。

実例

著作権というのはすごく複雑で、とても難しい話です。
専門家が、この記事を読んだら、まだまだ書き足したいことが山ほどあるでしょう。企業活動を考えると、法律上問題が山ほど浮き上がってきます。そこで実際に僕の事務所chordmarkではどうしているのか、参考までに記載します。

基本的には著作権はウェブサイトを除き、譲渡しない

上記のように著作権の譲渡は、多くの広報物においてはあまり意味をなしません。そのため、基本の契約書には、弊所に帰属するものと記載しています。
しかし、ウェブサイトだけは譲渡しています。

企業活動に促さないから

ウェブサイトにおいていえば、更新が日々必要なものに著作権や二次利用や言ってても企業のためにならないからです。そもそも更新する前提ですし。

よくウェブサイトの一番下に「copyright 社名 all right reserved」って記載がありますよね。あれ、書かないとダメなんです。
なぜなら、日本では明記しなくても著作者に権限が帰属されますが、世界では明記しないと著作権が付与されない国もあるんです。世界各国で閲覧できるウェブサイトの場合、記載しておく必要があります。著作権を譲渡しないと、あの文言、嘘になりますよね。かといって、弊所の名前を書くわけにはいかない。だから譲渡しています。
ただし、これも譲渡できるのはウェブサイトそのものの著作権であって、写真やイラストなどの他社に権利があるものは他社のままです。
ここ、注意が必要です。

譲渡する場合はどうしているか

利用許諾を取得する

著作権を譲渡する場合は、弊所の広報活動においての利用許諾をクライアントからとります。譲渡すると弊所の広報活動も制限されてしまいますから。利用許諾をいただけない場合は、譲渡しないか、著作権譲渡料をいただいています。

著作権を譲渡できない範囲を明確にしておく

カメラマンやイラストレーター、モデルなど様々な権利が一つの制作物に混在しているので譲渡できない範囲は明記しておきます。著作権を知らない人は、全部譲渡されていると勘違いしてしまいますから。

パートナー企業とも著作権や利用範囲はすり合わせておく

カメラマンやイラストレーターなどの著作権や利用範囲への対応はどうしているのか、事前に確認しておきます。プロジェクトのチーム編成は契約後に行うケースが多いので、契約書には記載しませんが、窓口となる弊所がクライアントとお話しをする際、説明できなくてはならないですしね。

データは譲渡しない(ロゴをのぞく)

データの譲渡の場合、そこにはカメラマンやイラストレーター、ストックフォトなど様々な方の著作物が存在します。これを僕の一存でデータを譲渡してしまうわけにはいきません。
ただし、「この写真をどこどこに使いたい」と連絡を貰えば、制作者の許諾範囲であればデータをあげています。

大事なのはお互いの仕事を尊重すること

クライアントにしても、デザイナーにしてもお互いの仕事は尊重することは人としてのマナーですね。著作権がお互いのビジネスの足かせにならないように、お互いで決めていくことがとても大切だと考えています。

デザインを発注する企業の方にとっても、クリエイターにとっても、すこしでも参考になれば幸いです。

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コードマークはブランディングデザインの手法を用い、企業のみなさまの意志を深く理解したうえで、貴社にフィットした制作物、制作プロセスのご提案をいたします。

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