としまえんは、なぜ愛されたのか

2020.08.27 Thu
カテゴリー ▶︎  Branding Other

としまえんが2020年8月31日をもって、94年間愛されてきたその歴史に、幕を閉じます。
僕も友人たちに誘われ、最後に遊びに行ってきました。
実は生まれて初めての来園でしたが、それでもとてもノスタルジックな気分になり、絵に描いたように平和な、とても愛されていた遊園地なんだなーと痛いほど伝わりました。
出口には「としまえん閉園反対」のプラカードを掲げる人もいたほどです。

なぜこれほどまでに愛される存在になったのか。
ブランディングを生業とするデザイナーとして、僕なりに考えてみました。

としまえんの歴史

1926年、家族でレジャーを楽しむという当時の田園都市ブームにより、次々と遊園地が設立されていた時期だったそうです。
そのうちの一つだったのが、としまえん遊園地。
実業家の藤田好三郎が設立し、その後、経営権が西武鉄道に渡り、現在にいたります。
設立当初は今でいう遊園地とは違い、ピクニック感覚で行く公園のような施設だったようです。
その後第二次世界大戦などの激動の時代を超え、元祖、流れるプールを開始したのが、開園39年後の1965年。
以降、機械遺産に登録された日本最古のメリーゴーランド「カルーセルエルドラルド」をはじめ、「東洋最大のコースター」とも呼ばれたジェットコースター「サイクロン」など、さまざまなアトラクションを導入し、徐々に遊園地という形を織り成していったようです。
流れるプールなど、革新的なアイディアも盛り込まれ、とてもユニークな遊園地だったのかもしれません。

アトラクション以外の顔

あまり知られていないかもしれませんが、としまえんの広告やポスターは、超有名な人たちがデザインしています。
「プール冷えてます」の広告では岡田直也さんがキャッチコピーを、デザインはカップヌードルの「Hungry?」のCMで有名な大貫卓也さんが手がけています。
エイプリルフールに新聞広告にのった「史上最低の遊園地」など、まるで広告でさえ楽しんで作ってるようなイメージも、としまえんが愛された理由の一つなのかもしれません。

そして、アトラクションという遊園地の機能だけでなく、桜やあじさいなど季節の花が楽しめたり、夏はプールと花火、オフシーズンには釣堀、冬はアイススケート、山口百恵さんのファイナルコンサートまでもおこなっていました。
そして、身長が測れる看板で、毎年お子さんの成長を楽しめる工夫もありますね。
遊園地の枠を超え、家族が思い出を作るには十分すぎるほどの存在価値です。

としまえんの提供価値

こうした背景を追っていくと、当時は話題性を欠かない画期的なイメージだったかもしれませんが、実は一番の魅力は、
「家族の平和な時間をつくる存在」だったことなのかもしれません。それを、遊園地というカテゴリの枠にとらわれず、としまえん全体で体現したいたんだなーと。

それを象徴するように、僕が初めて訪れて抱いた感想は、「絵に描いたような平和な雰囲気」。
家族の平和ってこういうイメージだなって思えるぐらいの景色でした。
これが、としまえんがお客様に提供していた本当の価値だったのではないかと。もちろん、今だから考える価値であって、当時から見た価値は違うものだったかもしれません。

しかしそんなイメージを連想させるとしまえんの、色濃いパーソナリティーをとても感じました。
これは後楽園などと見比べるとより強く感じます。後楽園も非常に古い遊園地ですが、名前を変え、そして女性向けにラクーアなども設立。現代のニーズに合わせたイメージがあります。

こうした提供価値というのは、実は中々わからないものです。
えてして、自社の価値はなんだろう?と考えると、つい「最先端だ」とか、「お客様の全てのニーズに」とか、表面的で口だけの、説得力のない話になりがちです。しかし、強く愛されるブランドをつくるには、こうした本当の提供価値を発見することにあります。
そして、その提供価値を企業全体で体現できるかどうかが、強いブランドを作る鍵になります。

たぶん、というか、絶対、としまえんは、そんなめんどくさい事考えてなかったと思うけど!!
なんとなく自分が考える良いものを一生懸命にやってただけなのかもしません。というか時代的に絶対そう。
ですが、この独特の変わらないパーソナリティーが愛される要素なんだと思うのです。商業施設の匂いを感じさせない。家族の平和な時間に寄り添った存在だったからこそ、大人になった後も愛される続けているのかもしれません。

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